【新刊】現代詩手帖特集版『シモーヌ・ヴェイユ――詩をもつこと』(思潮社、2011年12月)

 現代詩手帖特集版『シモーヌ・ヴェイユ――詩をもつこと』(今村純子責任編集、思潮社)が刊行されました。私も執筆と編集を分担しました。(定価1800円+税、ISBN978-4-7837-1868-0 C0098 E1800E 2011年12月25日発行)
 辻井喬、今福龍太、港千尋最首悟川本隆史生田武志栗田隆子河野信子十川治江の各氏をはじめ、充実の執筆陣です。シモーヌ・ヴェイユの初期哲学論考は本邦初訳。都内の大書店には出版社から直接納本し、今日か明日ぐらいから並ぶはずです。取次への出荷は年明けになりますので、各地の書店店頭では1月前半から購入できるようになります。アマゾンその他、オンライン書店での註文も年明け以降になりそうです。よろしくお願いいたします。

※急ぎの場合、恐れ入りますが、本日12月28日(水)中に思潮社に電話で御注文ください(思潮社は12/29-1/4まで休業。この間は発送できません)。申し訳ありませんが、1冊だと送料が290円ほどかかります(2冊以上は送料無料です。この本に限らず、思潮社の出版物であれば、どの本と一緒でも合計2冊で送料無料)。思潮社営業部 tel.03-5805-7501 思潮社ウェブサイト

【1/14追記】 アマゾンで取り扱い可能になりました。→http://amzn.to/AjVGzI

 目次と、巻末の「NOTE」(編集後記)に私が書いた文章を掲載します。

目次
○巻頭言
今村純子「詩をもつこと」

○インタビュー
辻井喬「詩と哲学を結ぶために」(ききて・今村純子)

○対話
今福龍太・港千尋戦間期――愛、恩寵、シモーヌ・ヴェイユ」(ききて・今村純子)

○シンポジウム
最首悟川本隆史生田武志・今村純子
シモーヌ・ヴェイユと〈いま、ここ〉 『人格と聖なるもの』をめぐって」

○論考
生田武志「拒食するシモーヌ・ヴェイユ その食生活の一断面」
河津聖恵「何よりもまず、詩人でありたい 詩人としてのシモーヌ・ヴェイユ
栗田隆子「神と笑いあうこと 「こっけい(ridicule)」から「ユーモア(humor)」へ」
今村純子「構造主義シモーヌ・ヴェイユ 神話がひらくリアリティ」
吉田文憲「『重力と恩寵』への覚書 ヴェイユと賢治」
鳥居万由実「大地の匂い、ぶどう酒、とりとめもなく」
稲葉延子シモーヌ・ヴェイユと時空間」
奥村大介「高みへの落下、あるいはシモーヌ・ヴェイユと重力の詩学

○特別掲載
河野信子十川治江「電子とマリア」(ききて・田辺澄江

○翻訳I
シモーヌ・ヴェイユ詩選(岩村美保子・今村純子訳)
「必然性」
「海」
「星々」
「扉」
「プロメテウス」
解題(今村純子)

○翻訳II
シモーヌ・ヴェイユ『初期哲学論文集』(抄)本邦初訳
「『グリム童話』における六羽の白鳥の物語」(今村純子訳)
「ヴィニーにおける自然の感情」(小倉康寛訳)
「「詩と真実」についてのカントの考察をめぐって 小論文草稿」(小田剛訳)
解題(今村純子)

○著作解題
シモーヌ・ヴェイユ主要著作解題
『神を待ち望む』(佐藤恵
『前キリスト教的直観』(今村純子)
『根をもつこと』(野樹かずみ)

○資料
シモーヌ・ヴェイユ年譜/主要文献一覧(今村純子編)

NOTE

NOTE抜粋
 本特集の編集作業をすすめているさなか、東日本大震災が起こった。その後刊行された中沢新一氏の著作『日本の大転換』(集英社新書、二〇一一年八月)を手に取り、そこに、太陽圏に属する原子力エネルギーを地上の生態圏に持ち込んだものが原発であり、異なる圏域に属するものを無理やり用いた結果がこの原発事故なのだという意味のことが明晰に述べられているのを読んだとき、シモーヌ・ヴェイユが光の世界たる天界と、重力の支配する地上を峻別することを説き、太陽のエネルギーを地上で受け取ることができるのは葉緑素による光合成の作用だけであると述べていたことが切実に思い出された。重力を克服しようとする文明の経験したものは、飛行機やスペースシャトルの墜落事故であり(トマス・ピンチョン!)、原子爆弾の投下、そして原発事故によって飛散した放射性物質の降下という重力=落下の惨事であった。重力圏の外部を求めた結果生じた重力的なる惨事。重力の克服がもたらした重力による死。重力の弁証法はここにもあったのだ。三・一一後にヴェイユを読むわれわれは、あらたな重力圏の思想を模索せねばならない。(奥村大介)