ヴェイユ『重力と恩寵』

 必要あってシモーヌ・ヴェイユ(Simone Weil, 1909-43)の著作を読んでいる。
 今日目を通したのは『重力と恩寵』(La pesanteur et la grâce, Paris, Plon, 1947)。邦訳は数種類あるが、さしあたり田辺保訳、ちくま学芸文庫版(1995年)で読む。
 ヴェイユの著作は全て没後に刊行されており、テクストの配列は著者自身ではなく編者によるものである。本書も無数の断片をギュスターヴ・ティボンの手によって、著者の遺稿ノートから編纂されたもので、長短さまざまな断想からなる一種のアフィリスム集の体をなしている。

 自分が苦しんでいるのと同じ苦しみを、他人がまったくそのままに味わっているのを見たいという欲望。だからこそ、社会的不安定の時期は別として、悲惨な境遇の人々は、その恨みを自分と同じ境遇の人々の方に向けるのだ。
 このことが、社会的安定のひとつの要因となっている。

 知性はただ、奴隷にふさわしい仕事にだけ適している。

 あらゆる情熱には、異様といいたいものが見出される。賭けごとにふける人は、ほとんど聖人と同じように、徹夜をしたり、断食をしたりする。予感を感じることもある。
 賭けをする人が賭けを愛するように神を愛するのは、非常に危険なことである。

 創造。善はこなごなにされて、悪の中にばらまかれている。