プロチノスと天皇制

 たまには哲学の古典を。

善なるもの一なるもの―他一篇 (岩波文庫)

善なるもの一なるもの―他一篇 (岩波文庫)

 プロチノスの著作群『エンネアデス』の中核をなす箇所の抜粋。岩波文庫版、2006年復刊。まだ店頭にあるので、新プラトン主義に関心のある向きは買っておいたほうがよい。
 絶対無限定の「一者」(一なるもの;欧文では the One, l'Unなどと訳す)をめぐって、言語の限界に肉薄するような議論がつづく。一者は善や認識を可能にするものだが、それ自身は善でもなく知性を持たないという。つまり認識論的な基盤にして倫理の基盤でもあるが、基盤自体はいかなる性質ももたない。
 ようするに、政治的な「権威」は何の権能も持たないが、「権力」の発動を可能にする(たとえば天皇制における権威=天皇と内閣=権力の関係)、という話と同じだ(え!?)。
 そうするとやはり、日本の中心の東京の、さらにまた中心である皇居が何もない森であると指摘した、この本を引き合いに出したくなるのが人情というものだ:
表徴の帝国 (ちくま学芸文庫)

表徴の帝国 (ちくま学芸文庫)