ショパンのヴァルス演奏会

clair-de-lune2007-05-12

 フランス文学・舞踊史研究の師匠HM先生のご自宅でショパンの演奏会が開かれることになり、ご招待に与る。横浜線の某駅で下車。先生のご自宅は駅から徒歩20分ほどの場所にある。地図を頂いていたが、かなり道順が複雑なため、タクシーで移動。今日が勤務初日という運転手さんは少々迷ったが、無事約束の午後3時に到着。周囲には畑も見える、静かな住宅街である。かわいい愛犬を抱きつつ出迎えてくださるHM先生。
 3時半から演奏会がはじまる。ピアノ演奏は私の友人でもあるHN嬢。HM先生、米文学のI先生、舞踊評論のHA先生、批評家のF先生が列席、わが友人K君&M嬢が列席。
 演奏曲目は、まずショパンのヴァルス・嬰ハ短調Op.64-2。HN嬢のピアノは至上の演奏であった。あの有名な下降音階の悲哀がこれほど見事に奏でられる場面に立ち会う幸福にはそうそう恵まれるものではない。この曲は、ときとしてこの下降音階で技巧を誇示するかのように早いテンポで弾かれることがあるが、あれはいただけない。彼女の演奏はまさに適切なテンポ(tempo giusto)であった。そして、同じくショパンのヴァルス・へ短調Op.70-2(遺作)を聴かせていただく。これはパリ・オペラ座図書館所蔵の手稿譜に基づくHM先生の校訂版による初演ということになる。抒情的なヴァルス。こちらもすばらしい。やはりピアノだけは生にかぎる。フルオーケストラは録音でも充分楽しめるし、弦楽器のソロなどもLPやCDで比較的楽しめるのだが、ピアノのソロだけはたとえアシュケナージであってもアルゲリッチであっても、私はかなり不満が残り、打たれた弦の振動が直接空気を震わせ同時に倍音の弦をも震わせ鼓膜へと到達する生演奏でないと満足できないのだ。N嬢とHM先生にはほんとうに大感謝である。
 演奏会後、歓談の一時。HM先生が用意してくださったたくさんのお料理のほかに、HA先生が手料理を差し入れてくださって、大変おいしく頂く。上品な紳士を絵に描いたような雰囲気のF先生は自称「フリーター(ニートではない)」とのこと(笑)。もともとNHKで音楽番組をつくっていたが、その後音楽批評・舞踊批評の世界で長らく活躍された方(ところでF先生とHA先生はご一緒にタクシーでいらっしゃったようだが、どうも私を乗せたタクシーが駅まで戻って、ちょうどお二人を乗せた模様。「今日が勤務初日で、さっきも同じお宅にお客さんを乗せた」と運転手さんが話してくれたそう。奇遇である)。しばらくすると、舞踊演劇批評の世界で有名なIT先生が到着。IT先生には研究会で何度かお目にかかっており、またバレエやダンスの会場でもよくお見かけするが、直接ご挨拶したのは今回が初めてであった。ダンスやバレエの話で盛り上がるが、「警官の職務質問を受けた回数とそのときの容疑」を自慢する者が続出する(外見と挙動に特徴があ(りすぎ)る人がそろっているのだ)。恐喝容疑だとか、アルカイーダと間違われたとか、職質だとおもったら警察官のスカウトだったとか、真偽のほどがわからない武勇伝が続く。ほんとうに楽しい時間で、無数のシャンパーニュを空けさらにジンをあおるという具合になってしまった。無節操に飲んで申し訳ありません。楽しい一日をありがとうございました>HM先生。
 夜10時頃、横浜線に乗って帰宅。

※画像はショパンの肖像。髪型だけ私に似ているかも。