こうの史代『ぴっぴら帳[ノート]1』

 こうの史代という漫画作家の作品は『漫画アクション』誌などで幾度か読んだことがあって、彼女の描く愛らしい女性、地味な職場(デスクワークよりも花屋とか食堂である場合が多い)で働き安アパートに暮らしながらも身の丈にあった生活を楽しんでいるような、万田邦敏監督の壮絶な傑作『UNLOVED』のヒロインをも思わせる、しかしそこまでストイックな感じがしない、ほどほどに俗っぽい味をも可憐さのうちに垣間見せる若い女性像が大好きで、彼女の単行本も何冊か買ってあったが、いかんせん漫画を読むのに小説以上に時間がかかるので、ずっと書棚に入れたままになっていた。今日取り出したのは2冊。
 まずはこの本。

ぴっぴら帳(ノート) (1) (ACTION COMICS)

ぴっぴら帳(ノート) (1) (ACTION COMICS)

 インコと暮す日常を描いた連作4コマ。インコ「ぴっぴらさん」(いちいちさん付けで呼ぶところが楽しい)が愛らしくもときに無気味だったり滑稽だったりする様子がよく伝わってくる。ちいさな食堂に勤め風呂なしアパートに暮すヒロインの「キミちゃん」も上述のような、どうみても近所にいたら好感が持てる女性なのだけど、ときどき言動がエグい(笑)。インコの描写はけっこうレアリスム(非常にかわいいけど、ときにその細密描写がいい具合に兇々しさ(笑)を醸し出している)。