血液バンキングの歴史

 輸血・献血・売買血など、日本における血液バンキングの歴史を論じた論文を読む。香西豊子「バンキングと身体――日本における血液事業の展開から――」。次の本に収録されている。荻野美穂編『身体をめぐるレッスン 第二巻 資源としての身体』、岩波書店、2006年、12月、pp.109-132。

身体をめぐるレッスン〈2〉資源としての身体

身体をめぐるレッスン〈2〉資源としての身体

 日本の血液事業が売血や預血などの血液銀行事業から無償提供の赤十字系事業へと徐々に転換していった様態を、戦後間もない頃、女性患者が輸血から梅毒感染した事件を発端に、豊富な史料に基づいて記述し、戦後の血液製剤による薬害エイズ事件、さらに現在ものこる献血血液の安全性の問題、さらには骨髄バンクや人造人体器官などのテーマへと接続する。現代日本における人体資源の提供(ドネイション)全般に関して問題の所在を簡潔に示す役割も果たす労作。