中沢新一・太田光『憲法九条を世界遺産に』

憲法九条を世界遺産に (集英社新書)

憲法九条を世界遺産に (集英社新書)

対談集。タレント本だと思って読むと、いきなり田中智学の話題が出てくる(!)。あなどれない。憲法九条というのは修道院のようなものだ、という話には共感する。現実の秩序を離れて、理想のために生きている人々の共同体が修道院だ。修道院の中で生きている人々が、直接現実世界に影響を及ぼすことは(現代では)難しく、また世の中の皆が皆、理念に生きることができるというわけではないが、しかし、現実世界の或る場所に理想のために生きるというあり方が実現しているということが大切なのだ。このような場があるのとないのとでは、現実世界のあり方がかわってくる。憲法九条も、そのままの形で現実的なわけではないが、日本のコンスティテューション(憲法/国家の基礎)の中に、そのような理念があるのとないのでは、現実の法体系や政治のあり方がかわってくるのである。