高橋哲哉『靖国問題』

靖国問題 (ちくま新書)

靖国問題 (ちくま新書)

買ってから1年を経て、しかも8月15日を過ぎてしまってからだが、ようやく読むことができた。この問題を考える上で絶対必読の文献である。戦死者を英霊として顕彰することで遺族の悲しみを国家のために殉じた者の家族としての歓喜へと転じさせる「感情の錬金術」装置として、靖国を論じる。靖国の代案としてしばしば議論される「無宗教の国立追悼施設」が、どれほど慎重に計画されようとも、不可避的に「第二の靖国」になる危険性を指摘した第5章の議論は重要である。