『ミクロコスモス:初期近代精神史研究』誌

 ビブリオテカ・ヘルメティカの平井浩氏が新しい学術雑誌『ミクロコスモス:初期近代精神史研究』を創刊した。第1集 は2月24日に月曜社から発売。これは要注目!

ミクロコスモス 初期近代精神史研究 第1集

ミクロコスモス 初期近代精神史研究 第1集

第1集目次。

I. 生命と物質
記号の詩学:¬パラケルススの「徴」の理論  菊地原洋平
ルネサンスにおける世界精気と第五精髄の概念:ジョゼフ・デュシェ−ヌの物質理論  平井浩

II. 空間の表象
画家コペルニクスと「宇宙のシンメトリア」の概念:ルネサンスの芸術理論と宇宙論のはざまで  平岡隆二
百科全書的空間としてのルネサンスマニエリスム庭園  桑木野幸司

III. ルドルフ二世とその宮廷
アーヘン《トルコ戦争の寓意》シリーズに見られるルドルフ二世の統治理念:《ハンガリーの解放》考察を通して  坂口さやか
ハプスブルク宮廷におけるディーとクーンラートのキリスト教カバラ思想  小川浩史

IV. 知の再構成と新哲学
伝統的コスモスの持続と多様性:イエズス会における自然哲学と数学観  東慎一郎
ニコラウス・ステノ、その生涯の素描:新哲学、バロック宮廷、宗教的危機  山田俊弘

翻訳
初期近代の哲学的世界観、神秘学、神智学における光シンボル  ゴルトアマー (岩田雅之・訳)
『光について』 フィチーノ(平井浩・訳)

動向紹介
ルネサンスの建築史:ピタゴラス主義とコスモスの表象  桑木野幸司
ノストラダムス学術研究の動向  田窪勇人
ルネサンスの新しい身体観とアナトミア:西欧初期近代解剖学史の研究動向  澤井直

発刊の辞。

初期近代(15-18世紀)の精神史研究(インテレクチュアル・ヒストリー)は、多様な要素が複雑に絡み合っている学問領域であり、そこには自ずと分野横断的な視点が必要とされる。分野ごと、さらには対象言語文化圏ごとに縦割されがちな従来の本邦の学問伝統においては、そのような方向性を持つ研究を発表する特別な場所の確立が真に望まれている。
初期近代の精神史研究を専門に扱うインターネット・サイト bibliotheca hermetica (http://www.geocities.jp/bhermes001/) に集う研究者達の手によってここに発刊される学術誌『ミクロコスモス:初期近代精神史研究』 Microcosmos: Early Modern Intellectual History は、そのような要請に真摯に応えようとするものである。
従来なら、思想史、美術史、芸術史、建築史、科学史、宗教史、文学史、教育史、政治史等といった各分野の枠に括られていた初期近代文化における多様な研究課題が、ここでは追求・分析されるだろう。また、それらの研究課題は、互いに交錯しあい、密接に関連していることが理解されるであろう。
若手研究者達に発表の機会を提供するだけでなく、精神史研究のオーディエンスそのものを開拓し育てていくことも目的としている本誌には、研究ノートを主体としたオリジナル論考と共に、本邦ではなかなか紹介されにくいドイツ語、フランス語、イタリア語で発表された海外の優れた研究論文の翻訳やラテン語等の重要原典テクストの翻訳、最新の研究動向や文献紹介等が収められることになるだろう。
レオナルド・ダ・ヴィンチに代表されるような一人の人間があらゆる領域に手をそめ、優れた業績を残した初期近代という時代は、分野横断的な精神史研究の独壇場である。本誌が、精神史の豊かさと深さ、特にその多様さをもってして、その大いなる時空間を再現・表象する「小宇宙」 − ミクロコスモス − となれれば幸いである。