中川純男先生、逝去 - clair-de-luneのブログ

　中世哲学研究者の中川純男先生（慶應大学文学部哲学科教授・文学部長、中世哲学会会長）が４月９日23時半頃、癌のため急逝された。中川先生は２月頃より入院治療を受けられていたが、春以降の公務復帰にも積極的であったと聞く。私もかつて、中川先生にラテン語でアウグスティヌスやデカルトやキケロを読んでいただき、またプラトンやカントの霊魂論を講じていただいた。講読でも講義でも、本質的に難しいことがらを語っているにもかかわらず、その語り口は明晰で、不必要な難解さからは一切無縁であり、大いに啓発された。また私が学部学生時代に事情あって休学した折には、学科の責任者として、大変親身に対応してくださった。お酒を御一緒させていただいたことは一度しかなかったが、先生はいくぶんか饒舌になるほかは、ふだんと少しも変わらないご様子で、楽しい酒席であったことを記憶している。今年の正月にも賀状のお返事をいただいたばかりであり、1948年９月18日生まれで61歳の先生の訃報は、にわかには信じがたいものであった。御病気とのことはうかがっていたが、亡くなるにはあまりにお若い。謹厳な学風と優しいお人柄を兼ね備えた先生だった。心より御冥福をお祈りいたします。