注目の新刊

フランス文学小事典

フランス文学小事典

 この種の本としては、長らく篠沢秀夫『フランス文学案内』(朝日出版社)が定番だった。実際この篠沢氏の著作はよく書けた本で、改訂を何度も施されているので内容もさほど古びていないが、現行の1996年改定版は6000円近い定価で。この事典は2100円と安価なわりになかなか充実している。仏文学徒は必携である。

ちくま評論選―高校生のための現代思想エッセンス

ちくま評論選―高校生のための現代思想エッセンス

 副題は「高校生のための現代思想エッセンス」。編者は全員高校の先生。かつて出ていた『高校生のための文章読本』『同・小説案内』『同・批評入門』の後継本という位置づけか。「高校生のための」三部作は梅田卓夫・清水良典ほか高校の教員の手になる編集で、もともとは教材(国語の副読本)としてつくられたものを市販本とした。清水氏はその後、文藝評論家になった。姉妹編に『女子高生のための文章図鑑』(紅野謙介金井景子ほか編)というのもある。

新・批評の事情―不良のための論壇案内

新・批評の事情―不良のための論壇案内

 現代日本の論壇概観。旧版と併読が吉。

イーハトーブと満洲国―宮沢賢治と石原莞爾が描いた理想郷

イーハトーブと満洲国―宮沢賢治と石原莞爾が描いた理想郷

 宮沢賢治石原莞爾がそれぞれに構想したユートピア。二人はともに日蓮主義者であった。

 賢治と莞爾。イーハトーブ満洲国。いったい、この二人は何者なのか。共通点はある。それは、二人がともに法華経の熱心な信者であり、当時、一世を風靡した在家の法華経教団である国柱会の会員だったことである。しかも、この二人は、入会時期もほぼ同時期なのである。宗教的理想を根底にして、社会変革を夢見たユートピア思想家。このような観点から、宮沢賢治石原莞爾の業績とその位置づけを整理。そして、その結果見えてくるものを、この混迷の時代に逆照射する。

第1章 法華文学こそわが使命―宮沢賢治
第2章 理想郷としての満洲建国―石原莞爾
第3章 大河の源流―「法華経」の行者日蓮
第4章 賢治における光と影
第5章 ユートピアを夢見て
第6章 現代を映す鏡

宮下隆二[ミヤシタリュウジ]
1965年、大阪生まれ。筑波大学比較文化学類中途退学。以降、塾講師のかたわら、独学で宗教、思想を学び、詩作に従事する。2005年、第2回「涙骨賞」優秀賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
紀伊国屋書店Bookwebより)