新刊情報 ロビダ『20世紀』

20世紀

20世紀

 フランスの風刺作家アルベール・ロビダ(Albert Robida, 1848-1926)の近未来小説『20世紀』(Le Vingtieme Siecle, 1883)がついに邦訳された。快挙である。かつて荒俣宏氏が『奇想の20世紀』(NHK出版、2000年)紹介されていて*1、かねてより読みたいと思っていた。じつは間もなく仏語原書を註文しようか、あるいは戦前に出た邦訳(抄訳的なものだが)を国会図書館近代デジタルライブラリーから印刷しようと思っていたところだったのだ。この訳書が刊行されたのはありがたい。
 19世紀末に夢想された20世紀。そこには世紀末社会の様相が拡大投影されている。電気文明、職業女性、政治の大衆化・・・etc.
 いま精読することができないのが残念だが、訳文も読みやすく、ロビダ自身の手になる見事なイラストレーション(カリカチュール)がカラー図版もふくめてふんだんに収録された立派な訳書である。ユートピア文学とか、19世紀のSF文学(ロビダはフランスでヴェルヌの最大のライバルであった)に興味があるかたは、とりあえず買っておく必要があるだろう。

奇想の20世紀 (NHKライブラリー)

奇想の20世紀 (NHKライブラリー)

 荒俣氏の『奇想の20世紀』は、現在、文庫版(NHKライブラリー、2004年)が入手できる模様。

*1:この本が出る前年1999年にNHKの人間講座で荒俣氏を講師とする連続番組『パリ・奇想の20世紀』が放送された。このなかでもロビダは詳細に紹介されている。同番組のテキストがこの本の原型。