山川元監督『東京原発』(2002年)

　山川元監督の『東京原発』(2002年・日本）をDVDで見る。

東京原発 [DVD]

　東京都知事が都の財政再建のため、新宿に原発をつくろうと言い出す。都庁会議室で知事がラディカルな持論を展開。腑抜けた都の幹部たちが右往左往するなか、都内で核ジャックが発生する。
　キューブリックの『博士の異常な愛情』と同様、核をめぐるブラック・コメディ。原発行政の矛盾やイカサマの数々を次々とエグい笑いに仕立てていく手法はなかなかに鮮やか。作中に東京原発推進／反対の根拠として示される細かいデータがどの程度実際のものを反映しているのかわからないが、原発は温室効果ガスを発生しないというのはマヤカシであるとか、プルサーマル計画は現実性がないとか、六ヶ所村は原発の設置環境として最悪の条件だといった話は大筋で事実である。まあ、映画ファンにすすめる類の映画ではないけれど、問題提起的な映画かつコメディとしてはそれなりに佳作。後半の核ジャック・シーンのいかにも低予算な雰囲気も陳腐なオチも、この前半の都庁会議室の脱力感に相応していて、この映画にはふさわしい。
　ところでクレジット・ラインには「協力：東京都」と表示される。これだけ都庁をコケにしておいてよく協力が得られたものだと妙に感心。まあこの程度のカリカチュールでは痛くも痒くもないということなのだろうけど。もっとも制作が2002年、公開が2004年と、若干のブランクがあることは、なかなか楽しい想像をかきたてるものである。
　なお、東京に原発をつくるというのは、恐らくは次の本に着想を得たものと思われる。

東京に原発を! (集英社文庫)