予習 ヘッケル研究文献

 エルンスト・ヘッケル Ernst Haeckel を中心に生物学史・比較文学を研究されている佐藤恵子先生(東海大学教授)の講演が国立科学博物館にて今週16日(土)あることを斯道の先達K.T.女史が教えてくださる。しかも私が9月30日に科学史学会生物学史分科会で発表させていただいたときのレジュメが同先生に渡っているという恐ろしい話も…。これは直接参上して弁明するしかないので(笑)、16日は上野に行くことが決定。同先生のヘッケル関係の論文を蒐集して読みふける。いま『モルフォロギア』誌22号、『津田塾大学紀要』第30号(1998年)に掲載された論文を読んでいるが、あらためてヘッケルのなかでの一元論哲学(物質の原理と生命の原理は一つ)と、或る種の生物に見られる美的な形象の関係(ヘッケルは『自然の藝術的形態』という図版集を刊行している)についての記述がきわめて興味深い。ヘッケルはダーウィニズムのドイツへの紹介者だとかエコロジーの始祖だとかナチス優生学の源泉だとか毀誉褒貶が激しいが、とにかく、一元論哲学(私の理解では物活論哲学)という生物思想家としての面の理解が(とくにわが国では)まだまだ不十分だ。佐藤氏の論文は、この一元論生物学思想としてのヘッケルにかなり詳細に切り込んでおり、貴重な研究となっている。

 文献は以下のとおり:
佐藤恵子「ヘッケルとフィルヒョウの進化論争――科学の自由をめぐる対立――」、『津田塾大学紀要』、NO.27、1995年。
・――「一元論的自然発生」、『津田塾大学紀要』、No.30、1998年。
・――「ヘッケルの根本形態学と携帯の美」、『モルフォロギア』、No.30、ゲーテ自然科学の集い、2000年。
・――「テクノロジーと新しい視覚――E.ヘッケルの『自然の芸術形態』をめぐって』、in 加藤泰ほか編『知の近代を読み解く』、東海大学出版会、2001年。