追悼・村山敏勝さん

11日夕方、英文学者の村山敏勝さんが亡くなった。享年わずか38歳。病没とのこと。ほとんど信じ難い。村山さんは文学批評理論、とくにクィア理論の方面でお仕事をなさっていた。また、最近は「医学と文学」、あるいは「医学文化論」の方面でご活躍されていた。まさにこれからというときの突然の死だ。私は村山さんと、かならずしも深い交流があったわけではないが、研究会で何度もお目にかかっており、また、彼は私の師匠のかつて教え子でもあった。次々と翻訳を上梓されたり、勤務先である成蹊大学での研究会の成果を論集にまとめられたりと、旺盛に活躍されているご様子を拝見していて、そろそろ医学文化論関係で大きなご著作を出されるのではないかと楽しみにしていたところなのだ。ほんとうに残念でならない。

(見えない)欲望へ向けて―クィア批評との対話

(見えない)欲望へ向けて―クィア批評との対話

本書が主著といってよいだろう。生前に単著を1冊刊行されたのは幸いだった。

人文学と批評の使命―デモクラシーのために

人文学と批評の使命―デモクラシーのために

イードの翻訳もなさっている。

病と文化 (成蹊大学人文叢書)

病と文化 (成蹊大学人文叢書)

この論集の実質的な編者は村山さんである。彼の論文「科学者としての医師の肖像――『ミドルマーチ』と細胞理論――」も収められている。ちなみに私の手許にあるこの本は、村山さんから何冊か託されていた医学史家S先生が私にご恵与くださったもので、つまり間接的に村山さんから頂いたものだ。大事にしたい。

村山さんのブログ「読んだから書いた」
http://d.hatena.ne.jp/toshim/
10月5日まで、活発に更新されている。彼の死をつげる、恐らく最愛の女性の手になるものであろう12日の書き込みを読むと、村山さんの独特の雰囲気がすぐに思い浮かんでくる。あまりに悲しい。心よりご冥福をお祈りする。