エンバーミングを業とする男が主人公。
エンバーミング(embalming)とは、遺体の損傷を修復し、細菌感染防止・腐敗防止などの処理をほどこして、生前に近い姿を復元する作業。土葬が中心の西欧で行われてきたが、近年は日本でも需要があるらしい。
西欧の科学思想における生命と物質の関係を
古代ギリシアから現代まで網羅的に論じた名著。上下で1000ページ近い大冊なので、これまで事典的に使っていたが、一度は通読したいと思い、読んでいるところ。近代の
生物学者のテキストのみならず、古代中世の哲学者の生命理論を丁寧に読みとき、また膨大な注釈書・二次文献を渉猟して書かれた見事な本である。著者が歴史家でなく
生物学者だということに驚かされる。日本でこの水準の歴
史書を書いた科学者は、近来では川喜田愛郎(ウィルス学者。
浩瀚な医学史『近代医学の史的基盤』は邦語文献としては比肩するものがない名著)と
山本義隆(物理学者。熱学史その他の重要な著作を多数書いているが、中でも3冊本の『磁力と重力の発見』は記念碑的著作)ぐらいだろう。