サルトル『ユダヤ人』

ユダヤ人論の古典を読む。

ユダヤ人 (岩波新書)

ユダヤ人 (岩波新書)

原書は Jean-Paul Sartre, Reflexions sur la question juive, Paris, Gallimard, 1954.
Réflexions Sur La Question Juive (Folio Essais)

Réflexions Sur La Question Juive (Folio Essais)

第1章〈なぜユダヤ人を嫌うのか〉より引用。
「…経験が、ユダヤ人という観念を生むというのは、とんでもない話で、逆に、その概念が経験に色をつけるのである。もし、ユダヤ人が存在しなければ、反ユダヤ主義は、ユダヤ人を作り出さずにはおかないだろう」(p.9)
「もし、奇跡によって、彼らの望んでいるように、ユダヤ人が皆殺しにされてしまったとしたら、彼等〔反ユダヤ主義者〕は、はっきり階級付けられた社会の中で、再び単なる門番か、店番に帰らなければならない。…それまでユダヤ人の不正な競争のせいにしていた自分の失敗も、いそいで、なにか他の原因に帰するか、自分の中に探って見るかしなければならなくなり、憤懣と、特権階級に対する陰鬱な憎悪に落ち込みかねない。このように、反ユダヤ主義者は、その敵を打ち砕こうとしていながら、しかも、生かしておかなくてはならないという不幸に、悩まされているわけである」(pp.28-29)