鈴木邦男『鈴木邦男の読書術』

鈴木邦男の読書術―言論派「右」翼の原点

鈴木邦男の読書術―言論派「右」翼の原点

 右翼業界きっての読書家、鈴木邦男氏の読書論。この人の方法というのは、とにかく揃いもの、つまり個人全集や「**文学全集」「**叢書」の類(たとえば中公の「世界の名著」シリーズのような本)を全巻通読することらしい。全巻通読という縛りをかけると、自分の読みたい本だけでなく、さして読む気がしない本もノルマとして読まざるをえなくなる。このようにして読書の偏りを減らし、知識や思索の幅を広げる。律儀な*1鈴木氏らしい読書術である。本書をよむと、鈴木氏の読書が質・量ともに並大抵でないことがわかるが、にもかかわらず、彼の書く文章は、どの著作を読んでも、不必要な難解さに淫する傾向やペダントリーとは無縁であるのが素晴らしい。近年だと佐藤優氏などもそうだ。大変な教養を身に着けていながら、それをあからさまにふりかざさない巧みな文章。こういう文章を書ける人物こそ、文筆家として理想的ともいえるし、また、もっとも油断のならない言論人ともいえるだろう。

*1:鈴木氏にはご縁あって数回お目にかかる機会を得た。朴訥で几帳面そうな、そしていつまでも青年の面影を残した人である。