ピーター・ウェーバー『真珠の耳飾りの少女』

 ピーター・ウェーバー監督『真珠の耳飾りの少女』(2003年、英・ルクセンブルク)を観る。

真珠の耳飾りの少女 通常版 [DVD]

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 原作はトレイシー・シュヴァリエの小説(私は未読)。
真珠の耳飾りの少女 (白水Uブックス)

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 フェルメールは小間使いとして雇った少女を愛するようになり、少女も彼の好意に応える。画家は少女に妻が大切にしている真珠の耳飾りをつけさせ、彼女を描く。完成するのは、誰もが知るフェルメールの傑作《真珠の耳飾りの少女》だ。画家の妻は嫉妬に狂う――。ストーリーとしてはそれだけだが、オランダ(ネーデルランド=低地地方)特有の光線*1が降り注ぐアトリエのシーンなど、フェルメールの作品の構図がそのまま引用されているショットがあって面白い。また、クローズアップを多用した、フェティッシュな映像美に特色がある。真珠のピアスをつけるために少女の耳たぶに画家が針を穿つ一瞬には息を飲んでしまう。また、妻の嫉妬、画家の娘のいじめにあいながらも、フェルメールを信頼し、彼に絵画的霊感を与える、無学だが聡明な女性、小間使い・グリート役を演じるスカーレット・ヨハンソン は、表情が掛け値なしに素晴らしい。画家一家の要求に楚々として伏目がちに頷き仕事をこなし、画家や彼のパトロンの要求にはっと驚いて当惑するときの微妙な表情、そして画家の愛を受け若い性欲を発露させる上気した顔つきなどを、繊細に見せてくれる。この女優なくして、本作は成り立たなかった映画だろう。フェルメールを演じるコリン・ファースもなかなかいい。
 上野の東京都美術館で今、フェルメール展が開催されている(12月14日まで)。近々見に行こう。

*1:俗に「オランダの光」と呼ばれ、フェルメール、あるいはレンブラントの作品に独特な陰影を与えている。この光について検証したドキュメンタリー映画がピーター-リム・デ・クローンの『オランダの光』(Hollands Licht, 2003年、オランダ)。残念ながら未見。これも近々DVDを借りてみよう。参考:オランダの光