東工大・火ゼミ

 毎週火曜日にひらかれている東京工業大学科学史研究会「火ゼミ」に出席。2本の発表を聴かせていただく。
・中尾麻伊香 「大衆雑誌における「科学」と「兵器」―1930〜40年代」
・荒川文生 「日本における電力系統技術の発展について(仮題)」

 畏友・中尾氏の発表は例によって刺激的なものであった。彼女の研究テーマは「核のイメージ」である。今回の発表でも、いまだ原子爆弾が実現されていない時期において、大衆的なメディアのなかで核兵器がどのような言葉で、いかなるイメージで語られていたのか、ということが中心的な問題となっており、『新青年』のような雑誌に科学ジャーナリストや科学者が執筆した記事が具体的に分析されている。核の問題は、ヨーロッパにおけるアウシュヴィッツがそうであるように、しばしば表象不可能性の議論のなかにあらわれるが、そうはいっても、メディアは核を(それなりの形で)表象してきたのであり、資料を渉猟し、その具体的表象を蒐集しなければ話にならないだろう。その意味で、中尾氏の研究はきわめて重要なものである。