澁澤龍彦の驚異の部屋

 5月2日の記事で紹介した「澁澤龍彦の驚異の部屋」展を見に行く。会場は松濤のギャラリーTOM。松濤美術館の近くにある。午後3時到着。

澁澤龍彦の驚異の部屋

2007年4月7日(土)−5月20日(日)

休館日: 毎週月曜日
開館時間: 10:30-17:30
入館料: 一般600円/小中学生200円/視覚障害者及び付添者300円

このたびギャラリーТОМは、「澁澤龍彦の驚異の部屋」展を開催いたします。

1950年代の終わりから澁澤龍彦は美術の世界へ目を向けはじめましたが、その批評美学は従来の美術評論とまったく隔絶していて、自身の美学の基準に合うものしか評論の対象とせず、その美術批評は孤島のような存在でした。

その批評精神は先鋭で、広い視野と洞察力をもっていましたが、エロティシズム、夢、幻想、倒錯、聖なるもの、オブジェ愛、ユートピア、インファンティリズム、玩具、動物・植物・鉱物の世界など、当時の日本人の日常から駆逐されているすべてのものをまるで擁護するような視点で論じています。

そのような美術論を読むと、わたしたちは精神的な異境に旅するようでもありましたし、自分の気づかないでいた何かに出会うこともありました。いわば異端の大祝祭に参加している臨場感を味わうこともできました。

岡本太郎によって縄文の美学を知ったように、わたしたちは澁澤龍彦によっていままで異端や偏奇と思われていた事物を新たに見つめることを学んだのです。

本展の「澁澤龍彦の驚異の部屋」では、そうした澁澤龍彦の膨大な美意識の世界を年代的かつ百科事典的にたどるのではなく、現在の優れた作家たちの手による、澁澤さんが偏愛した事物やオブジェ観念を形象化・具体化したオブジェの展示を企画しております。

会場には、新旧の作品を含めた多様なオブジェ作品はもとより、岩石・貝殻・骨の標本・鏡・書物・写真などの自然物や人工物などによる夢の宇宙誌的な作品が展示されます。

ギャラリーТОМの空間を、澁澤龍彦の脳内の夢想を形象化するさまざまな作品によって「驚異の部屋(ヴンダーカマー)に変貌させるというのが、この展覧会の企画意図です。

★特別企画★
巌谷國士氏による驚異の写真展「澁澤龍彦の光景」も併設されます。

【出品作家】
池田龍雄、大月雄二郎、加納光於桑原弘明合田佐和子、アンティエ・グメルス、鈴木真、建石修志、谷川晃一、中西夏之四谷シモン

【レクチャー】
巌谷國士澁澤龍彦の驚異の部屋」  
4月21日(土)午後6時〜 1500円(ワンドリンク付)


協力:
澁澤龍子、巌谷國士埼玉県立近代美術館アートプランニング・レイ、青木画廊、 ギャルリー東京ユマニテ、オメガスイーツ

  http://www.gallerytom.co.jp/ex_page/ex.html

 出品作品のなかで、合田佐和子氏の《アラビアンナイト序章》(2001年)に傑出した魅力を感じた。これは鉱物標本のセットのようにピースに区切られた白い箱のなかに、クリスタルをはじめとする数々のガジェットが収められているものだ。一種の驚異箱(Wunderkammer, cabinet de curieux)なのだが、そういう血走った蒐集趣味とはことなる、もっと静謐な、しかし切実なものを感じる。蒐集すること。それも無色透明な結晶体を蒐集すること。そしてピースを埋めること・・・。

(画像は合田佐和子アラビアンナイト序章》(2001年)。Gallerry TOM サイトより)

 午後4時半、会場を後にする。久々に名曲喫茶ライオンに。あいかわらずここは落ち着く。リクエストしてハインリッヒ・ビーバーの《ロザリオのソナタ》(抜粋)をかけていただく。

名曲喫茶ライオン http://lion.main.jp/