エリボン『ミシェル・フーコー伝』、P.-M.シュールのこと

ミシェル・フーコー伝

ミシェル・フーコー伝

 フーコーの伝記的事項について知る必要があり、定評あるエリボンのフーコー伝を読む。この時代のノルマリアン(フランスの高等師範学校出身者)絢爛たる交友関係には眼が眩む。

 ところで、私が非常に好きな哲学者ピエール=マクシム・シュール Pierre-Maxime Schuhl(もともとはプラトン学者だが、機械や想像力をめぐって文学・科学・医学・哲学…を縦横に行き来する不思議な著作がある)がエコール・ノルマルの入試と大学教授資格試験の二度にわたってフーコーの試問にあたった教員であることを本書を読んで初めて知った。シュールはバシュラールやカンギレム(フーコーの師)と縁が深く、フーコーとは関心の傾向や対象を共有する気がするが、この伝記を読むかぎり、試験官と学生という以外の接点はなく、とくに親密な交流はなかった模様。まあ、あまりそりが合わなかったということか。
 参考までに、シュールの著作で邦訳があるものを挙げておく。

  1. ピエール=マクシム・シュール、谷川渥訳『想像力と驚異』、白水社、1983年
  2. P.-M.シュル、粟田賢三訳『機械と哲学』、岩波新書 (青813)、1972年

 なお、シュールは他に米国の観念史学派による偉業『観念史辞典』(Dictionari of the history of ideas. 邦訳名は『西洋思想大事典』平凡社、全5巻、1990年)の項目執筆もしている。