武智鉄二『白日夢(81)』@渋谷シアターイメージフォーラム

イメージフォーラム武智鉄二特集上映に再び足を運ぶ。今度は畏友falcon1125氏が付き合ってくださった。
この1981年製作『白日夢』は1964年の同名作品の自己リメイク。歯科医院で治療中、麻酔で薄れゆく意識のなかで繰り広げられるSM的な夢想劇。シナリオは64年版と基本的にかわらないようだが、突っ込みどころは激増している。なぜ女性患者は着物で歯医者に来るのか。なぜ篳篥の演奏に乗ってディスコで踊っているのか。なぜ濡れ場のボカシが能の舞台の映像なのか。なぜラストで「太陽がいっぱい」になるのか・・・。上映中の劇場は、失笑と苦笑につつまれていた。無機質な金属製の器具に囲まれた歯科医院の治療室が拷問部屋へと転ずる禍々しさは64年版の白黒映像のほうがはるかに豊かに表現しているが、このカラー映像の81年版もなかなか捨てがたい魅力を持っている。リメイクはたいていオリジナルに見劣りするが、この映画には必ずしもそれは当てはまらないようだ。それにしても武智という人はまじめに前衛と耽美を追求すればするほど滑稽になるのか、それともあくまで一種のコメディを作ろうとして予定調和的にこのような映画を完成させたのか、どうも決しがたいところがある。なんとなく前者のような気もするが、意外と策士なのかもしれない。