森田芳光『(ハル)』

こんなことをしている場合ではないのだが、映画のビデオをみている。
(ハル)』(1995年)は、インターネット前夜の(つまりニフティ・サーブなどのパソコン通信の最盛期〜末期の)、メールでやりとりを続ける男女(彼らは当初たがいの性別すら正確にしらない)が、やがて互いをかけがえのない人として求めあい、惹かれあうようになる――。出会い系サイトなどという不粋なものが現れる以前の、old and good days だ。
主演の深津絵里が素晴らしい。彼女は10年経ってもあまり変わらない(今でも若いというべきか、若い頃からあまり浮ついてなかったというべきか)。

(ハル) [DVD]

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その後(ちょうどこの映画が公開されたあと、1996年頃から(ちなみに Yahoo! Japan の営業開始は1996年である)、現実社会ではインターネットの一般利用が始まりヴィジュアルな操作性をもったOS(ウィンドウズ)が普及したことで、メールは加速的に大衆化し、いままで一定の技能と素養を持った者で構成されていたネット上のコミュニティが、いわば一見客に荒らされていくことになる。十数年来のコンピューター利用者としては、N88-BASICやMS-DOSのコードを必死で覚え、アシストワードで原稿を書き、ロータス1-2-3で計算をしていた時代が懐かしい(ちなみに私はいまだに当時の機材を捨てられず、PC-8801PC-9801など歴代のマシンを山のように保有している。場所をとってたいへん)。